今月のワンポイントアドバイス2001年版
   2001年1月 「練習名人」
   2001年2月 「正確に塞げば遅くてもOK」
   2001年3月 「ふさぎもれしてませんか??」
   2001年4月 「音量のコントロール」
   2001年5月 「五孔の打ち」
   2001年6月 「100パーセントの呼吸」
   2001年7月 「音量と音色」
   2001年8月 「遠くから吹く?!」
   2001年9月 「長管の効用」
   2001年10月 「自分の体にあった楽器」
   2001年11月 「調子の良い時、悪い時」
   2001年12月 「人前で吹く」

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2001年 1月 「練習名人」

 アマチュアの方が「プロの方々は一日にどれくらい練習をするんですか?」という質問をよくされます。この質問にはなかなか正確にお答えしにくくてこまります。「過去1ヶ月の一日の平均練習時間は?」とか「昨日は何時間?」と聞かれればまだ答え易いのですが、やはり時間でお答えするのは困難です。
 あえてお答えするとすれば、「課題ができるようになるまで」ならわりと正解に近いかもしれません。それでもその課題が数日で解決するものでない場合は「一日の練習量」の答えとしては不正確です。
 いずれにしても、「練習の効率」ということを考えずに、単に時間だけ言うのは正確ではありません。

 今回のワンポイントアドバイスで申し上げたいのは「上手な人ほど練習も上手」ということです。
 自分がどの部分ができないか、それは何故なのか、そしてどうすれば解決できるのか、そのために行う練習はどういうことなのか。ということが短い時間で理解できれば練習の効率は良くなります。
 「毎日1時間は必ず吹いているがなかなか上達しない。」というような悩みをお聞きする事が有ります。その1時間をどう使っているかがとても大事です。ただただ吹いているだけでは「慣れる」ことはありますが「自分の問題点を解決する。」ことになりません。また、時として「苦手な部分は避けて通る。」ような練習さえしてしまいます。

 「自分がどの部分ができないか」を探すために録音する。「それは何故なのか」を見つけるのに何が影響しているかを考える。「どうすれば解決できるのか、そのために行う練習は」のために工夫する。

 というようなことをいつも考えて練習してみて下さい。
 工夫と努力です。  

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2001年 2月 「正確に塞げば遅くてもOK」

 2000年7月のワンポイントアドバイスで「均一になるべき音の長さが不均一」であることが原因で早いフレーズがスムーズにならないというお話をしました。「指の動きが早すぎて不均一」になり易いこともあわせておはなししましたが、もう一つ原因がありますので今回はそれをお話します。

 尺八の手孔には西洋のフルートのようなキーはありません。指で手孔を塞がなくてはなりません。そのために塞ぐのに時間がかかる場合が有ります。「時間がかかる」というのは「不正確になる」ともいえます。つまり孔の周囲を同時に塞ぐのではなくて、片側から塞さがって行くという感じです。
 尺八を手に持って手孔をポンポンとたたいてみてください。この時に孔の周囲が同時に塞がっていればポンと大きな音がします。片側から塞さがって行くとポンといういい音がしません。このほんの一瞬の違いが早いフレーズを吹いた時に差になってきます。
 指がいくら早く動いてもこの一瞬の不正確さは大きく影響します。逆に余り早く動かなくても正確に塞ぐことが出来ていれば切れの良いフレーズを吹くことが出来ます。
 力をぬいて軽く塞いでもポンポンという大きな音がするように指に手孔の位置を覚え込ませて下さい。
回数を重ねるしか方法はないと思います。

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2001年 3月 「ふさぎもれしてませんか??」

 先月のワンポイントアドバイスで手孔を塞ぐのに「不正確になる」お話をしました。今月も手孔を塞ぐ事に関連したお話です。
 尺八に西洋のフルートのようなキーがない事が大きな利点になることも多いのですが、欠点になることもあります。最大の難点は塞ぎもれが起きることです。例えばツは良く鳴るのにロがなりにくい、と言うような場合にどこかの手孔が塞ぎもれを起こしている場合が有ります。ツは鳴ってロが鳴らないから1孔の塞ぎもれかというとそうとは限りません。1孔のみが開いた状態から全部の手孔を塞いだ状態に変えた途端に、手全体のバランスが変わります。そのせいでどこかの手孔に塞ぎもれが起きるのです。
 また、ロからツのメリに移った場合、ロからロの大メリに移った場合などに2孔のもれが起こりやすのです。特に長管で2孔に指の付け根に近いところを使っている場合に起こりやすいのです。
 メリが出にくい事の原因がもれに有る事がありますので、この観点からもう一度チェックしてみて下さい。

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2001年 4月 「音量のコントロール」

 1999年2月のワンポイントアドバイスで「小ーーさい音出ますか」というお話をしました。今回はもうちょっと広い意味での「音量のコントロール」のお話です。
 当たり前の事ですが普通に吹くと、吹きはじめは大きい音でだんだん小さい音になります。当然一番大きい音の部分がまん中あたりに来るように吹く事もありますが、大体、後半は息が無くなってくるにつれて小さい音になります。 実はこの「息が無くなってくるにつれて小さい音になる」ということが曲者です。
 息が無ければ小さい音になってしまうのは自然な事です。つまり、「音量をコントロールする」という面から考えると、仕方なく小さい音を出している事になってしまって、積極的な音量のコントロールとは言いにくいのです。
 音楽の要素のうちで音量の変化ということが非常に大きな役割を担っています。「もっと歌って」というようなアドバイスが実は「上手に音量を変化させて」と言い換えられる場合が多いのです。
 ところが肝心の音量変化の練習が積極的にはなされていない様です。先ほど言いましたように息が無くて小さい音を出している事で済ませている事がしばしばあります。
 息があるうちから小さい音を出すということを心掛けてみて下さい。息があって小さく吹くことは以外とむつかしいものです。そして、演奏をしている中で自信をもって小さく吹けたら、その演奏はより素晴らしいものになります。

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2001年 5月 「五孔の打ち」

 2001年2月のワンポイントアドバイスで「正確に塞げば遅くてもOK」というお話をしました。今回もこれに関連した話です。
 尺八に使う5本の指の中で動きのいい指と、動きにくい指が有ります。人指し指はわりと動き易い指ですが、特に親指は力は有りますが動きの面ではちょっと不利な指です。しかも、利き手でない方の親指の動きは悪いです。動きが悪いにもかかわらず、利き手でない方の親指を五孔に使っている方が多いのも事実です。
 で、動きにくい指であるために五孔の打がきれいにならないお悩みの方が多い様です。でも、ほとんどの方が早く動く練習をされているので動きにくい指であるにもかかわらず、とても早く動かせるようになっています。実はここに問題が二つあります。
 第一の問題は正確さです。早く動かす事を考え過ぎていて正確に塞いでいない事が多いです。塞ぐのに時間がかかったり、完全に塞いでいない内に開けてしまったりしています。ゆっくり、正確に塞ぐ練習を丹念に行って下さい。この場合早さは無視して正確さのみを心掛けて下さい。ついつい早く動いてしまいますが、早くならない様にして、練習して下さい。
 第二の問題は打の早さです。ゆっくりな打はできますが、実はちょっと早くすることがとても難しいのです。じょじょに早くしているつもりが、突然急に早い打になってしまう例がしばしば見受けられます。打の早さが2種類しかない様にです。途中の早さの打があると、とてもきれいな打になりますので、いろいろな早さで練習してください。そしてその早さの変化がスムーズに移行できるように練習してください。但し、早さを変化して練習している時に、正確さが欠けてきたらちょっと遅い打の練習にもどらなければなりません。
 癖がついてしまっている場合修正はたいへんです。基本にもどってゆっくり、正確に、からやり直して下さい。  

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2001年6月 「100パーセントの呼吸」

   ブレスの問題についてお話します。
(「呼吸」というと吸ったり、吐いたりのことですし、「息継ぎ」というと、水泳みたいなので「ブレス」という言葉を使わせていただきます。)
 音楽には流れがあります。良い流れには良い切れ目があります。「間」という言い方をする方が適当な場合もあるかと思います。特に拍子をカウントしない古典本曲にはこの「流れ」「間」がとても大切になります。
 尺八は息で音を出す楽器ですから、上手にブレスをしないとこの大事な「流れ」「間」といったものをこわすことになります。
 ところが、本曲を演奏する方が陥り易いのが、ブレスの時にいつでも100パーセント吸うということです。
 ブレスに時間をかけられない場所もあるはずです。そして、次のフレーズが100パーセント吸った息の量でなくても充分に吹ける場合もあります。また、100パーセントの息の量を使いきる必要のないフレーズもあります。
 これらのフレーズをいつでも同じ息の量で吹くととても退屈な演奏・表現になっていきます。
 本曲は生きています。いきいきとした演奏にするためには、フレーズが必要としている長さで吹くべきです。今までの息の量では全く足りないこともあるでしょうし、今ある息の量では長くなりすぎることもあります。
 フレーズを生かす演奏を心掛けて下さい。息はそのための道具です。

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2001年7月 「音量と音色」

   尺八に限りませんが、「音色」に対していろいろな表現をすることがあります。「かたい」「やわらかい」等々。非常に抽象的ですが、言わんとする事が通じるのも事実です。
 音色は演奏者独自のものであることが多く、これをコントロールすることはなかなか出来ないものです。ところが、一人の演奏者について考えてみると、良い音色が出ている時と、そうでない時が明らかにあります。
 多くの場合、大きな音量が出ている時(効率良く鳴っている時)に良い音色が出ている様です。(意識してむら息にしている場合ではなく)このコーナーで何度か申し上げている「1日10分の乙ロのロングトーン」を実践していると徐々に大きな音量を得る事ができますし、それにつれて音色も良くなっていきます。
 で、今回お話しようとしている事は、音量が小さくなった時の事です。
 音がいつ無くなったのかわからないような最後の部分の処理のできる方でも、音程が下がってしまっては台無しです。それともう一つとても大事な事は「音色の急激な変化」をさける事です。音量が小さくなるに従って音色も当然変化して行きます。しかし、良く鳴っていて、かつ良い音色から音量が小さく、息のエネルギーが音になる時の効率の悪い音色に急激に変化すると、萎えた・衰えた感じがします。
 「音色の維持」ということをちょっと考えてみて下さい。

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2001年8月 「遠くから吹く?!」

   よい音、よい音色を得るために「毎日10分の乙ロ」をずっとお勧めしてきています。
 また、口の中の容積を大きくするとなめらかな音になると言うような事もお話しました。
 ひとそれぞれ吹く時のイメージの持ち方が違うので、色々な表現方法でお話してきていますが、一つうまく言った例がありましたので、それをお話します。
 尺八を吹く時に息は唇の間から出るのは当然です。しかし、「息の出る場所が唇の所 」というふうに認識するとうまくいかないことがあります。息が「唇よりずっと奥の方」から出ているというイメージを持って吹いてみて下さい。
 息の出る「ノズル」が口の中の奥にあると思っても良いかもしれません。このイメージによって唇にはいっていた余計な力が抜けて、なめらかな音色になります。
 表題の「遠くから吹く」というのは唇で吹かないで、口の中の方のにある「ノズル」で吹くという意味です。 。
 試してみて下さい。

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2001年9月 「長管の効用」

   古典本曲を吹いていると、だんだん長管で吹いてみたくなるものです。低音に大きな魅力があるのはどなたも感じる事だと思います。
 よく、「この曲は何寸管で吹くのがよいでしょうか」といった御質問を受ける事があります。何寸管で吹くかという決まりは全くありません。ただ、「鹿の遠音」や「鶴の巣籠」を長い尺八で吹くのはあまり似合わないなと感じます。これとて、決まりではありません。 また、「長管」がどの長さからなのかも規定があるわけではありません。

 ちなみに、尺八は一寸長くなると半音低くなる言われてきましたが、これは一尺八寸近辺のことで、長くなるほど一寸では半音低くなりません。一尺八寸管と4度違いにするためには「一寸半音」の原理で言うと二尺三寸なのですが実際はもう一寸ぐらい長くしなければなりません。このため、一尺八寸管と4度違いのA管のことを「二尺三寸」と呼ぶ事が有ったり「二尺四寸」と呼ぶ事が有ったりして混乱します。

 長管を吹く事による利点がいくつか有ります。
 長管を吹いた後に一尺八寸管を吹くととても楽に感じます。長いから息が沢山必要になるかだらという面も有りますが、長管の方がより「正確さ」を必要としているからではないかと思います。つまり尺八の鳴るポイントに対して正確に吹けるようになるということです。逆に言えば、力づくでは長管は上手く鳴らせないと言う事です。
 また、長管を正しく吹く事でより自然な姿勢を得る事ができます。無理な姿勢で長管を吹いているとどこかが痛くなってきます。痛くならないような自然な姿勢を身に付けざるを得なくなります。例えば二孔をおさえるのに人指の先の方では手首を痛めます。小柄な方ならば親指と人指し指の根元で管をはさむようにしてもいいかもしれません。つまり二孔は人指し指の根元でおさえます。一尺八寸管の時とは違う持ち方ですが、どちらもできるようになることで、より自由になっていきます。
 姿勢に関連する事ですが力づくで孔を塞ごうとすると多くの場合塞ぎもれがおきます。無駄な力を抜いてささえる様にする事が身につきます。

 皆さんも是非長管を吹いて尺八の大きな魅力を感じて下さい。

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2001年10月 「自分の体にあった楽器」

   多くの方の尺八はほとんどの場合プロの製管師が作ったものだと思います。その尺八は作った製管師の最善の工夫や努力の結果であるはずです。
 ところが、それはその製管師にとっての最善であってその尺八を買って吹いている人の最善とはちょっと違う場合があります。
 顎の当り、手孔の位置(特に長管の場合塞ぎ易さとしての位置。また、音程からみた位置。)などです。

 顎は一人一人、形が違いますから自分の顎にあった尺八の形状を見つけなければなりません。ほんのちょっとの修正で長い間の苦労がうそのように解決する事もあります。

 手孔の位置に関して2項目あげました。始めに書いたのは、長管で1孔の位置が右に、3孔が左に(右手を下にして尺八を持つ場合)どれだけ振ってあるかということです。(手孔の位置は直線上になければいけない、という考え方もあるようですが、音楽的にみて全く意味のない事です。それだけでなく、無理な姿勢で吹き続けると手を痛めることにもなります。)無理なく自然な姿勢で手孔が塞げるような位置が理想です。
 2項目目は、上の方の手孔が開くにつれてカリ、或いはメリぎみに吹く癖の方がいます。または、5孔をあける時に(特に琴古ではイ)親指が音程に影響する範囲に留まっている癖のある方もお見受けします。常にその位置に親指が来て音程が低めになるのであれば、手孔を修正しなければならないかもしれません。

 自分の姿勢にあった吹き方ができるような、また自分の吹き方で音程が正しく出るような楽器が自分にあった楽器といえます。

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2001年11月 「調子の良い時、悪い時」

   自分で音を作る必要のない楽器(ピアノなど)の奏者でも調子の良い時、悪い時が有ります。ましてや色々な影響を受け易い唇が、重要な楽器の一部と考えられる尺八の演奏に調子の良い時、悪い時が無いはずが有りません。

 ほとんどの悪い時の症状は、「調子が悪くて指が動かない」ということはなくて、「音が出ない」と言う事だと思います。「出ない」のは極端ですが「出にくい」或いは「楽に出るはずが楽じゃない」と言う事かもしれません。
 とすると、「唇の状況」が日々違う事にその原因が有るように思われます。唇はその日の湿度、気温、食事の内容などによって状況がかわりますから、それぞれのケースを拝見しないとなんとも言えません。今回お話するのは、「調子の良い時」が「調子の悪い時」を作っている、ということです。

 「調子の良い日」はどうして調子が良いと感じるかお考えになった事が有りますか。調子が良いと感じる一つの理由は、息が音になる効率が良いと言う事です。ですから少しの息で音がでますし、ちょっと息を多くすれば大きな音が楽に出ると言う事です。この理由は、息の出口を小さめにしぼっても息のビームが音の出るポイントに確実に当たっているからです。
  これに対して、調子の悪い時は、息のビームが音の出るポイントに正確に当たっていません。それなのに、「調子の良い時」の記憶のまま息の出口を小さめにしぼってしまうのです。

 息のビームを常に音の出るポイントに確実に当てるように心掛けるのも必要です。そのほかに覚えていただきたいのが「調子の良い時に、息の出口を小さめにしぼりすぎない」ことです。いつでも同じように広めに音の出るポイントを捕らえるようにする。この事で「調子の悪い時」を少なくすることができます。

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2001年12月 「人前で吹く」

 尺八を吹いている人ならよほどの初心者以外は人前で吹いた事があると思います。 また、その多くの方が「人前であがらない」ことを望んでいます。「あがる」ことが良い事とはだれも思っていないからだと思います。体が堅くなる・吸う息の量が減ってしまう・暗譜したはずが忘れてしまう、などなど、 「あがる」がために起きる不都合は数限り無くあります。これらを克服するために色々な工夫をすることも良いと思います。自分なりの工夫をして克服できればこんな素晴らしい事はありません。しかし今回申し上げたいのはこのような工夫の一つではありません。「あがる」ことの良い面をお伝えしたいと思います。

 何度も使っている譜面の間違いを本番で見つけてしまう、ということがあります。これは、「集中力」が普段とはまるっきり違っているからです。本番では普段の練習ではどう頑張っても出せないような集中力が出てきます。この「集中力」は「あがる」ことの様々なマイナス面を補って余りあるものです。
 視点を一点にとどめるのが集中することである、という場合がありますが正しくありません。F1のカーレーサーはレース中、ものすごく集中します。このとき一点を見つめていたら危険きわまりありません。「きょろきょろ」しているのです。脳のアンテナを広げて、より多くの情報を得ようとしています。
 演奏する時の集中もこれに似ているかもしれません。様々な音の情報(メリが高い、低い、音色が良い、悪い、合奏者とのピッチが合っている、ずれているなど)を瞬時に判断しそれに対応しなければいけません。
 このように普段ないような「集中力」で演奏する「プラスあがり」の状態なら、脳は忙しくてマイナス面を造り出すヒマがありません。
 「集中」することが何よりの「マイナスあがり」防止策です。

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