今月のワンポイントアドバイス2000年版
   2000年1月 「伝統」考
   2000年2月 「タンギング」うまくいきますか
   2000年3月 「態度に技術が見えてくる」
   2000年4月 「下手が上手くなる?!?」
   2000年5月 「内吹きと外吹き」「メリ吹きとカリ吹き」
   2000年6月 「メリすぎる話?」
   2000年7月 「早く動き過ぎる指」
   2000年8月 「あの音程を忘れない」
   2000年9月 「行の変わり目とフレーズ」
   2000年10月 「吐く息のコントロール」
   2000年11月 「息の形」
   2000年12月 「カリ吹きのメリット」

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2000年 1月 「伝統」考

 2000年の第一回に当ってちょっとだけ大袈裟なタイトルでお話しようと思います。
 「伝統」を考えるのにまず、わかりやすく楽器の発達で考えてみましょう。現在はほとんどの尺八の歌口には象牙か水牛の角などの竹より硬い素材が使われています。また内側には漆が塗られています。こういった技術が初めから使われていたとは考えられません。歌口について言えば、使っているうちに減ってきたのを修正するために後から入れたのであろうと思われます。それがいつの頃からか初めから入れられるようになったのでしょう。また、内側の漆は、始めは腐り止めの意味が大きかったに違いありません。そのうち漆を1回でなく何回か塗ると音が出やすくなることに気がついた人がいるのではないでしょうか。そして何回も塗るより「地」を使えば簡単に同じ効果が得られる事に気付きました。
 こんどは演奏の技法について考えてみましょう。例えば「コロコロ 」「ツのメリをめってロと同律を出す」「三のウ」などの技法がはじめから使われていたとは考えられません。長い間に考え出された技法にちがいありません。
  どちらの例をとってみても「伝統」というものが過去の「ある瞬間」に出来上がったものではないということです。

 「同じ師匠から直接同じように教わっても、人によって随分違ってしまうもの」が本曲です。拍子が無いということがこの変容を可能にしました。映像・音・譜面がしっかり残っている現代ですらそうなのですから、100年とはいわず例えば50年前の2代(師匠ー弟子ーその弟子)くらいの時間の経過は本曲の姿を非常に変えてしまったに違いありません。でもこれが本曲ー伝統の姿なのです。こういうことがあったからこそ古典本曲がその魅力を増したのです。「変える」つもりはなくても「変わってしまう」のです。

 ところが、「変えよう」と思って変えると本曲はとても薄っぺらなものになってしまいます。先人の必死の思いを受け継いだ上で、更に何ができるか、それが問われているのではないでしょうか。

 長い間かかって培われてきた 伝統=本曲は博物館にあるのではなくて、日々の現代人の生活のなかあってはじめてその価値がより輝くのです。そして、現代もその「長い間 」の一部なのです。

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2000年 2月 「タンギング」うまくいきますか

 初めにお断りしておきますが国際尺八研修館で講習している古典本曲ではタンギングは一切使いません。タンギングを使って演奏が容易になるフレーズがあることは事実ですが、印象まで安易になりがちです。タンギングを使うのは主に現代曲や福田蘭童作品でです。でも使うからといって全部の音に使うということはありません。使った方がより音楽的に効果のある場合に使います。

 今回は最も基本的なタンギングについて解説いたします。
 物の本にはよく、tu tu tu という発音をしなさいというようなことが書いてあります。もちろん間違いではありませんし、この方法でうまくいくのであれば全く問題ありません。
 しかし、ほとんどの解説書が音(息)を出す瞬間のことの記述に終始していますが、大事なのはその前です。
 「息の圧力をかけたままの状態で舌で内側から栓をする。」という準備が必要です。特に大事なのが「息の圧力をかけたまま」の部分です。この準備の状態がきちんとできていればあとは簡単です。栓をしていた舌を舌早く(「手早く」と」書こうとしたのですが。)引っ込めればいいのです。(この時の感じがtu という発音になる)
 連続でタンギングをするときも息の圧力はかけっぱなしです。いちいち息の圧力を止めてしまっては上手な連続タンギングはできません。「音を出す瞬間よりも前の、音を切る瞬間により意識を集中」して「切れ良く舌で栓をする」「圧力をかけ続ける」事を忘れないで下さい。  

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2000年 3月 「態度に技術が見えてくる」

   舞台上の態度を見ただけでその人の技量がある程度わかることがあります。 上手な方とそうでないかたのたち振るまいはおのづと違うものです。
 今回は尺八を吹く方にとっての舞台上の態度で大事なポイントをお話します。

 一つは尺八をかまえてから吹くまでの時間です。構えてから音が出始めるまでに随分時間のかかる方がいます。音の出るポイントにちゃんと当っているかの確認に手間取るのかもしれませんが、いつ音が出てくるのかわからなくて聞く人の緊張感を損なってしまいます。
 「息を吐いた状態でかまえて、静かに一息吸って次に吐く時は音になる。」
ぐらいが良い流れだと思います。曲の途中で尺八に休みがあって次に吹くための用意に随分早くからかまえてしまうのや、うっかりしてあわてて構えるのも好ましくありません。
 尺八はいきなり吹いて必ず音が出る確信の持ちにくい楽器です。そのため、鳴るポイントをしっかりつかみたい為にかまえてからの時間が必要になってしまうわけです。これを直すには普段から鳴るポイントを大きくつかむ練習が必要です。大きくつかめば最善のポイントでないにしても音をはずすことはなくなります。具体的に言うと「唇に力の入った吹き方」・「唇を横に強く引張った吹き方」はポイントを小さく捕らえがちになってしまいます。必ず音が出るという確信が持てていれば舞台上の態度にも余裕がうまれます。「毎日のロ吹き」の時に音の出初めのパターンをいろいろ試してみて下さい。ともすると「毎日のロ吹き」がワンパターンになりがちです。いろいろ試して一つの癖に固定していかないようにすることで自由度が増します。音に対して自由ならば出したい時に出したい音が出せるようになります。

 舞台上での態度で大事なもう一つのポイントは吹き終わりです。音が消えたか消えないかの段階で尺八のかまえをやめてしまう方がいます。または急いで尺八を水平にしてしまう場合もあります。どちらも余韻を壊してしまいます。(おことを弾く方で一番最後の音を弾いたとたんにお辞儀をしてしまう方がいます。尺八はことの音が消えるまで必死にがんばっているのに拍手がきてしまうし、お辞儀はできないしとっても困ります。)息がなくなって音が消えても次の一息吸う時間ぐらいはかまえたままでいてなおかつゆったりと構えをとくほうが落ち着いた印象になります。このためには
 「いつ音がなくなったかわからないような最後の部分の処理」
が大切です。「毎日のロ吹き」の時に音のお終いの部分に気をつけてください。音量がゆれないで安定して小さくなっていくように。またお終いの部分は音程も下がりやすいですから下がらないようにカル必要があります。そしていつ音が消えたかわからないように。

 結局「音をどれだけ自由にできるか」で舞台上の態度まで変ってくるのです。 やっぱり「ロ吹き」続けよう!

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2000年 4月 「下手が上手くなる?!?」

   妙な表題を付けましたが、上手でない人が上手になると言う意味ではありません。

 ある曲を吹いていてつっかえるフレーズがあったとします。こういう時よくやるのは、
その場所のちょっと前から同じスピードで再度吹いてみる。そうするとまたつっかえる。4〜5回そんなことをやって、次に上手く行ったのでその場所の練習は終わりにして先へ進む。

 こんな手順で練習をしていることが多いのではないでしょうか。

 ここには大変な間違いがあります。「つっかえた」あるいは「間違えた」と判断するのは「脳」の役割です。実際に動いているのは「手」です。「手」には判断力はありません。(「手」だって「脳」によって司られているのですが。。。)「手」は回数をこなした動きをしっかりと覚えます。上の例の場合上手く行ったのはたったの一回であとの数回は間違っていたのです。そうすると今度やる時には多くやった動きが再現される確率が非常に高くなります。間違えれば間違うほど「その動き 」がしっかりと身についていくのです。練習の最後の一回が上手く行ったからと言ってそれは「手」にとっては間違った動きになってしまっているのです。

 「下手が上手くなる」とはこういう「まずい動きに習熟する」ことなのです。

 「手」はある動きをさせればさせるほどその動きを忠実に再現してくれます。それが良いのか悪いのかは「手」は知りません。ですから練習で間違ってはいけないのです。間違わないスピードでくり返し繰りかえし、手に動きを覚えさせて下さい。

 「正確だけど遅い」方が「不正確だけど早い」ことより良いのです。
前者を早くするのはごく簡単なことですが後者を正確にするのは非常に困難です。
本来の早さで練習したくなりますがじっとこらえて正確に動くようになるまで遅いテンポでくり返し「手」に覚えさせてやって下さい。これが難しいフレーズを身につける近道です。

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2000年5月 「内吹きと外吹き」「メリ吹きとカリ吹き」

   「内吹き」「外吹き」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
 歌口に息を当てると息が歌口の上下に別れますが、音が出ている時は息は50%と50%にではなく、およそ80%と20%ぐらいに別れているのだそうです。この80%の息がどちらに行くかで「内吹き」「外吹き」が決まります。
 管の中へ80%の息が入るのが「内吹き」で逆が「外吹き」です。ロウソクを灯して乙ロを吹きながら管尻を炎に近付けてみて下さい。すっと炎が消えるのが「内吹き」で、不思議なくらい炎が動かないのが「外吹き」です。
 この「内吹きと外吹き」はメリカリとは関係ないようです。メッたから内吹きになるということではありません。演奏家の90%ぐらいは「外吹き」らしいですが、「内吹きのプロ」もたくさんいます。音量の大きさともあまり関係ないようです。

「内吹き」「外吹き」のメリット.デメリットもいまのところはっきりしません。

 「メリ」「カリ」ではなく「メリ吹きとカリ吹き」といったときには普段の吹き方を指します。全体の音程を低めに吹く吹き方を「メリ吹き」と言い、反対が「カリ吹き」です。
 出す音の音程が正しければどちらの吹き方でも全く問題ありません。ただ多くの場合メリの音が十分にメレておらず、高くなりがちです。「メリしろ」の多い吹き方、つまりメリのできる余地の多い「カリ吹き」がお勧めです。その「カリ吹き」で必要としているピッチの楽器を選ばなければなりません。例えばA=440Hzだとしたら、「カリ吹き」でA=440Hzに調整するのです。
 高めのピッチの尺八だからといってメリ吹きをするのはお勧めできません。そういう場合は楽器をなおすべきです。
 音が自由になるならピッチ調整の**万円なんて安いものです。

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2000年6月 「メリすぎる話」

   「メリ」に関してはこのコーナーで何度も取り上げていますが、今回はちょっと違った観点からお話します。当然メリは手孔の塞ぎ具合との兼ね合いもありますが、今回は歌口部分に注目します。

 歌口部分での標準の吹き方をメリ度0とします。一段階目のメリのメリ度を1とします。メリ度1には「ロのめり(ロの半音下)」「ツのめり(ツの半音上)」「ウ(レの半音上)」「リのメリ(チの半音上)」などがあります。また、更に深くめるメリ度2には「ロの大めり(ロの一音下)」「ツの大めり(ロと同律)」「丸のウ(レと同律)」などがあります。

 (これらは国際尺八研修館で講習する古典本曲には頻繁に使用されます。そしてこれらの音が尺八音楽を非常に奥深い、味わいのあるものにしています。)

 メリ度の同じ音が連続する時は大きな問題はありません。しかし、メリ度の違う音が連続する場合に問題が起きます。
 たとえば「丸のウ」から「ツのめり」に移行するフレーズがしばしば使われます。「丸のウ」はメリ度で言うと2で、「ツのめり」はメリ度で言うと1です。従ってメリ度を同じまま吹いたのでは「ツのめり」が「ツの半音上」よりも低めになってしまうのです。(厳密に言えば「ツの大めり」になる。)
 メリ度を同じままで吹くなら「丸のウ」から「ツのめり」のときの「ツのめり」は1孔の開口部分をやや広くしなくてはなりません。
 他にもこれに似た例はたくさんあります。

 メリが高いと言われ続けているとついつい低め低めに吹きたくなりますが、大事なのは「正確に」ですから、低すぎるのもいけません。
 音程を正確に吹くために「メリ度」に注目してみてはいかがですか。

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2000年7月 「早く動き過ぎる指」

   例えば、「春の海」の中にある「ロツレチリロツレ/チリロツレチヒイ」というような早いフレーズを吹く時になかなかスムーズにいかなくてお悩みの方が多いと思います。今回はこういった早いフレーズを上手に吹くためのヒントをお話します。

 早いフレーズが上手くいかないと、大概の方は「指の動きが遅い」と感じる様です。実際に遅いこともあるかもしれませんが、多くの場合「均一になるべき音の長さが不均一」であることが原因です。「指の動きが遅くて不均一」になることは少なく、「早すぎて不均一」である場合がほとんどです。
 指にはいろいろ役割があって力のある指と動きの得意な指があります。「人さし指」はとても動き易い指です。それに比べて「薬指」は早い動きはちょっと苦手です。ここで動きの差がでてきます。
「指の動きが遅い」と感じて早く動くように練習すると、人さし指の動きは過剰に早くなるのに薬指は余り早くならない。または、薬指のスピードは十分であるのに、早すぎる人さし指のために「早すぎて不均一」を「指の動きが遅い」と誤解してしまう場合もあるようです。
 

また、均一にならないもう一つの原因は「右手から左手」あるいは「左手から右手」への受け渡しが上手くいかないためです。早く動くための練習ばかりしているとこの動きも早すぎてしまうかもしれません。

 いずれにしても早いフレーズを上手に吹くためにはどんな指使いに対しても「指が早く動くように」ではなく「音の長さを均一」になるように工夫してみてください。

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2000年8月 「あの音程を忘れない」

   このコーナーではたびたび音程の大切さについて述べています。しかし、なかなか思うようにならないのが音程のコントロールです。
 今回は、良い音程で演奏するための一つのヒントを申し上げます。

 本曲で、例えば譜面上のある行のはじまりのフレーズが「ハロー」だったとします。この場合の「ハ」は「リ」と同じ音程です。ところが運指は多くの場合二孔と四孔を開けてややめって出しますので音程がきまりにくい。適当に記憶にある運指することで出している方が多いのではないでしょうか。どうやってこの「ハ」の音の音程を確信をもって出すか。これが大きな問題です。この行の直前の行の終わりの音、つまり先ほどの「ハ」の直前の音が基準になります。直前の音が例えば「リ」ならばこの音の音程をしっかり覚えていて、これと同じになるように「ハ」を出します。
 また、前の行が「レ」で終わって次の行が「ヒ」で始まる場合は、「レーヒ」の音程感覚をきっちり覚えて、そして行が変わっても音程の意識を切らないで「レ」を基準にした「ヒ」を吹きます。

 当たり前の事の様ですが、行が変わると音程のつながりの意識を切ってしまう方が多いように思います。
 どんな状況でも一つ前の音を忘れない事が大事です。

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2000年9月 「行の変わり目とフレーズ」

   古典本曲の譜面では行の変わり目がフレーズの変わり目とつい考えてしまいがちです。
 しばしば、行の変わり目で、ゆっくり息をしてしまったりします。
 ところが、音楽としてのフレーズの変わり目は別の所にある場合があります。(もちろん、行の切れ目とフレーズの変わり目が一致している場合もあります。)一つのフレーズがどこまでなのか。ゆっくり息をしてもいい場所なのかどうか。といったことを良く考えてみてください。ある二つの行を一行に書き直すことでフレーズの認識が上手くいく場合もあるかも知れませんし、一行に書かれているフレーズを二行に分ける事で上手くいく場合もあるかも知れません。

 これと関連して、もう一つ大事なのは「息継ぎはいつでも同じではない 。」ということです。どうしても息が足りなくなるので息継ぎをせざるを得ないができれば息をしたくないというフレーズもあるのです。そういう時は、息継ぎの時間はできるだけ短く。また、息継ぎに充分時間をかけてもかまわないこともあります。
 「息継ぎの工夫」 で「より良いフレーズの認識」が可能になるかもしれません。

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2000年10月 「吐く息のコントロール」

   99年2月のワンポイントアドバイスで「小ーーさい音出ますか」ということをお話しました。この時は小さい音がきちんと出せると音楽的表現にとって良い、ということでした。
 今回は「吐く息のコントロール」という面からお話します。

 初心の方に小さい音で吹いてみて下さいと申し上げる事があります。
 面白い事にかなりの場合、小さい音で吹いても、大きい音で吹いても、吹いている時間が変わらないのです。(もちろん初心の方ですから、小さい音・大きい音の差も少ないのですが。)吐く息のコントロールが上手く行っていない為に、口の開いたゴム風船のようにあっという間に空気が出て行ってしまうのです。
 「吐く息」を上手にコントロールすることでこの問題が解決していくだろうと思います。
 最も単純な「吐く息」のコントロールは息を出さないことです。「ロ吹き」の時に、息を吸ってすぐに吐いていませんか。息を吸い終わるのと音を出すのがほぼ同時ではありませんか。
ちょっと気をつけて音を出す直前にほんの一瞬でいいですから息を止めてから吹き始めてみてください。
 次に一瞬息を止めた後、徐々に吹いてみてください。そしてこの「徐々」の時間をすこしづつ長くしてください。これだけで「吐く息のコントロール」が大進歩します。
 強い息・大きい音も大切ですが、耐える息・消え入りそうなピアニッシモもとても大切です。

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2000年11月 「息の形」

  よい息の形についてお話します。
ここで言う「息の形」とは、吹いている状態を上あるいは横から見た時に息の広がりがどうなっているか、ということです。
 息の形が朝顔のように広がると、少しの距離の違いで息の圧力が大きく変わってしまいます。
 尺八はメリが重要な演奏の要素ですから、通常吹いている状態が、ややカリぎみの方がメリの余地(メリしろ)があって良いのです。息の形が朝顔のようになっていると少しカリぎみにしただけで息の圧力が急激に減少します。 (距離の2乗に反比例して弱くなる。) 従って極端な表現を使えば「筒」のような息の形で吹ければ、息の形に関しては申し分ないのです。

 尺八を使わずに手のひらに息を当ててみて下さい。そして、手と口の距離を変えてみて下さい。手を遠ざけた時に急激に息の圧力が弱くなる息の出し方だと、きっとカリが上手くいかないだろうと思います。

 「遠くなっても弱くならない息の出し方」は、実は、今までに何度かお話した、「口の中の容積」を大きくして吹くことなのです。「口の中の容積」を大きくして手に息を吹き掛けてみて下さい。手を遠ざけても息の圧力が弱まりにくい事にお気付きでしょうか。

 「口の中の容積」を大きくする事が音色をよくする事にだけでなく、カリぎみに吹ける事でのメリの余地を作る事にもかかわっていたのです。

さあ!メリの為に「ロ吹き」ちゃんとやろう!

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2000年12月 「カリ吹きのメリット」

 以前のワンポイントアドバイスで何度か「メリしろ」の多い吹き方、つまりメリのできる余地の多い「カリ吹き」がお勧めです。ということをお話しました。もう一度復習しておくと「カリ吹き」は通常吹いている状態が、ややカリぎみのポシションで吹くことです。「メリしろ」が多いのでお勧めしましたが、もう一つとても重要なメリットがあることに気付きましたので、お話します。

 メリぎみの吹き方の場合、唇の息の出口(アンブシュア)と歌口の距離が近いので、この距離が変動した場合に音程に与える影響が大きくなってしまいます。逆にカリ吹きだとアンブシュアと歌口が遠いのでこの距離の変動が音程に影響しにくいのです。例えば、アンブシュアと歌口の距離が10mmの場合と15mm場合では同じ1mmの変動が10パーセントか6.7パーセントかの違いになります。
 この微妙な違いが、特にロングトーンの時に顕著に現れます。乙のロを長く吹いた時に、息が無くなって来た最後の方で音程が下がり易くなります。メリぎみに吹いている方はこの下がり方が大きく、微調整に苦労します。カリぎみの吹き方をしていると、余り微調整をしなくても、音程が一定に保たれ易いのです。

 「メリぎみの吹き方」「カリぎみの吹き方」といっても実際にはごく僅かな距離の違いです。この僅かの違いを実現するためには、先月お話した「筒」のような息の形で吹くことです。

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