今月のワンポイントアドバイス2002年版
   2002年1月 「なかなか上手くならない人の共通点」
   2002年2月 「難しいフレーズの練習」
   2002年3月 「音色を聴く」
   2002年4月 「舌でメル!!??」
   2002年5月 「舌でメル その2」
   2002年6月 「稽古場の使い方」
   2002年7月 「ブレスすると高くなる」
   2002年8月 「1/2の法則」
   2002年9月 「ウォームアップは必要?」
   2002年10月 「打ちのこつ」
   2002年11月 「究極の暗譜法!」
   2002年12月 「割り増しのメリ、割り引きのメリ」

すべてこのページ内にあります。
TOPに戻る

2002年 1月 「なかなか上手くならない人の共通点」

 上手くなりたいという気持ちははどなたもお持ちだと思います。ところがどんどん上達する人とそうでない人がいるのも事実です。どんどん上達する人は才能があると言ってしまえばそれまでですが、どんな才能があると、どんどん上達するかはよくわかりません。それよりも、なかなか上達しない人に有る共通点を見つけたほうが良いと思います。

 尺八を吹くのが全く初めての人に、尺八を渡して音を出すように言うと、いつまでも音が出せない人と、割と簡単に音を出す人がいます。いつまでも音が出せない人を見ると同じ事をくり返しています。つまり初めに当てた尺八の位置を全く変えようとしなかったり、ただただ同じように吹き続けているのです。ダメなポイントでは何回やってもだめです。
 これに対して、割と簡単に音を出せるようになった人は、一度吹いて音が出ないと、当てる位置を少し変えてみる、息の出し方を変えてみるというように様々な工夫をしています。ダメなポイントはすぐに諦めることをしています。

 この例のように上手くいかなかった方法に対して、どう対応するかと言う事がとても大事です。

  「上手くいかない方法はやめる」のです。

 また、上級の方で上手くいかない事がある場合、そのやりかたが癖になっている場合が有ります。「上手くいかない癖」が付いてしまっているのです。「癖」を見極めて早く修正する事が必要です。

 いずれにしても、「工夫と努力」が有効にできているか、ということです。 

目次に戻る

2002年 2月 「難しいフレーズの練習」

 曲の中には難しい部分とそうで無い部分があると思います。ついつい吹き易い部分だけ吹いて練習した気になっているということがあります。
 極端な事を言えば簡単に吹けるところは練習しなくてもいいのです。
(もちろん簡単に吹けると言う事が音楽的に優れているとは限りません。より深い表現を会得するには簡単に吹けるところを更に検討していく必要があります。)

 吹きにくい・難しいところをピックアップして練習することを皆さんなさると思います。ピックアップしたその部分ができるようになって、その曲を初めから吹いてみると、できるようになったはずのところで、またもつれてしまったというような御経験をおもちではないですか。練習が足りないといってしまえばそれまでですが、単に練習が足りないのではなく練習方法が間違っているためにピックアップして出来ても曲の中ではできないということが起きるのです。

 何がいけないかというと、その難しいフレーズの前がどんなフレーズであったか、或いは何の音があったかということを考えていないのです。直前の指の状態や、メリ・カリの状態などが難しいフレーズに影響しているのです。ですから、その影響を除いた状態でそのフレーズを練習しても本当に練習した事にならないのです。
 難しいフレーズがあったら、その部分の習得のために、直前の状態を考慮した練習をして見て下さい。
 具体的にいうと、難しいフレーズの前に簡単なフレーズがあったとしても、その簡単なフレーズから練習するのです。その簡単なフレーズの中の何かが次に影響しているはずです。
 影響の元を早く発見できれば、練習の効率もぐーんとアップします。

目次に戻る

2002年 3月 「音色を聴く」

 ほとんどの楽器の演奏において大きな音量を出せるかどうか、ということが重要です。
 これはエネルギーが音になる効率や表現の幅にかかわってくるからです。
 また音量が大きく出ている(効率良く鳴っている)時に音色が良くなるというのも事実です。
 ところが音量にとらわれすぎて逆に音量が出ないという現象があります。上手く鳴らない時、調子の悪い日は特にそうですが、費やしたエネルギーに比べて音量が上がらない、あるいは同じ音量を出すのにいつもより多くのエネルギーが要る、という傾向があります。
 こういう状態の時には音色を無視して音量の方へばかり気をとられています。

 一息のロ吹きをしてみると、その間に音量だけで無く、音色も様々に変わります。どなたにも、どんな調子の悪い日でも良い音色が出る瞬間があるものです。それをしっかり聞き逃さないでください。そしてその良い音色を維持しつつ音量を上げて行くようにします。

 この「良い音色が出る瞬間 」はもしかすると吹き終わりのごく一瞬かもしれません。多くの場合、力の抜けた瞬間に良い音色が出るものです。
 その瞬間の唇や口内のイメージをしっかり捕らえて、いつでも再現できるようにすれば、好不調の幅も少なくなっていきます。

目次に戻る

2002年 4月 「舌でメル!!??」

 このコーナーでも何度も取り上げていますが、またまた「メリ」に関してです。

 メリは歌口のある上端部の開口面積を減らす事で実現できる、ということは何度かお話しています。
 効率良くこの面積の開け閉めのコントロールができれば、メリ・カリが効率良くできます。
名人のメリ・カリが思いの他、角度の動きが小さいと思われた事があるのではないでしょうか。これはまさに開口部面積の開け閉めのコントロールが非常に効率よく行われているためです。

 これで全てと言ってもいいくらいですが、メリに関してはもう一つ方法があります。それは口の中の状況を変える事です。 多くの場合「舌の位置」を変える事で音程が変化します。音程が高くなるよりは、低くなる事の方が多いと思います。
 この「舌の位置」の変化を「開口部面積の開け閉め」に上手にシンクロさせると更に効率よくメリ・カリが可能になります。
 上級者は無意識に、このことを行っていると思われます。無意識にできるようになるのは時間がかかりますから、意識して「開口部面積の開け閉め」(角度の変化)と「舌の位置の変化」をシンクロさせてみてください。

 これであなたも「メリ大好き人間!」

目次に戻る

2002年 5月 「舌でメル その2」

 もう1回「舌でメル」お話しです。

 前回「口の中の状況を変える事 」で音程が変化することをお話ししました。これがメルこと有効に作用するという内容でした。

 どんな曲でもメリばかりということはなく、めったり、戻したりということをします。
 ところがメリばかり吹いていると、メリが出やすくなってくるものです。どうやらこれは「口の中」の状況がメリに都合良く変化してこることが原因です。つまり時間をかければ、口の中の状況がメリ向きになるということです。
 この時の口の中の様子をしっかり記憶にとどめて下さい。上手に記憶にとどめるためには自分なりのイメージを作るといいと思います。「舌と上顎の間にこんにゃくを挟んでいるような」というようなイメージで記憶するといいと思います。(これはあくまでも例ですので、念のため。)
 イメージを作って記憶にとどめた後は、メル時にこのイメージを再現する様にするのです。
 意外に口の中は普通の状態のままで、吹く角度のみ変えている事に気付くと思います。
 イメージの再現をこの角度の変化にシンクロさせる事ができれば、音程の変化の効率は今までよりずっと良くなるはずです。

 これであなたも本当に「メリ大好き人間!」

目次に戻る

2002年 6月 「稽古場の使い方」

 「稽古場の使い方」というとちょっと妙に聞こえるかもしれませんが、師匠の所へ行って稽古をつけてもらう時のことです。

 師匠の所では、できれば待ち時間が無いほうがいいし、次の人が待っていると「もう一度お願いします」というようなことは言いにくいので、なるべくすいている時に行きたいのが人情です。師匠の側でもお弟子を待たせないようにするために時間を決めている場合もあると思います。そして、自分の稽古が済むとすぐに帰る、という稽古の受け方をしている方が多いと思います。

 ところが、これはとても損な稽古の受け方なのです。

 自分の稽古の時より他の人が稽古をつけてもらっている時の方が、冷静に聞く事が出来ます。また、注意される事というのは、ほとんどの人にとって共通のことがらです。そして第三者的に聞くとどうしてうまくいっていないのかが、わかりやすくなるものです。

 そして、さらに大事な事は、稽古場では師匠の音を生で聞いていられるということなのです。
 ある作曲家が「作曲にしても、演奏にしても現役でバリバリやっている人の生活に触れるとか、その人の仕事を手伝うとか、一緒に旅行するということを通して得るものがおおきい」ということを言っています。

 長い時間その環境に浸っていると、そのレベルに近づきやすくなるのです。

 一言で言うと、上手くなるには「稽古場にはできる限り長く居る」ということです。  

目次に戻る

2002年 7月 「ブレスすると高くなる」

 例えば古典本曲において、ある行が終わって、息をとり次の行を吹くというときに、初めの行の終わりの音と、次の行の始まりの音が同じ音の場合、特に気をつけることは無いように思えます。取り立てて違う状況はないからです。
 もちろん同じ音、という前提ですから同じ音程で吹かなければならないのは言うまでもありません。
 実はただ行が変わるだけではなくて、この二つの音を出す上には大きな違いがあるのです。
 それは、たっぷり息があるか、そうでないかの違いなのです。
 メリ以外の音を出している場合、息の有る無しは音を出す上で大きな影響は無いようです。所がメリ音で終わって、息をとって、前と同じメリ音を出すと、息のある時の方が大分音程が高くなりやすいのです。
 これは空気が肺の中にたくさんあるほうが、吹く息の圧力が大きくなりやすいからです。ですから、同じ音であっても息のある時の方をより深くメルか、吹く息の圧力を弱くする、といった微調整をしなくてはなりません。

 ほんの僅かな違いが音程に影響します。くれぐれもくれぐれも細心の注意をはらって演奏してください。 こういう注意も一旦身に着いてしまうと、無意識のうちにできるようになります。

 最後には無心で吹けるようになりましょう。

目次に戻る

2002年 8月 「1/2の法則」

 古典本曲は自由リズムの曲である。という表現がされることがあります。
 この表現は時として大きな誤解をまねきます。
 「自分の好き勝手に自由に吹いていい」と受け取られる場合があるのです。
 これは大間違いです。カウントするような時間の認識のしかたが無い、というだけで、実際はその瞬間を逃したら良い味わいが、だいなしになるような厳しい間の連続なのです。

 その古典本曲の中に相撲の「柝」のような「とーーーーん、とーーーん、とーーん、とーん、とん」というようなリズムがあります。実はいろいろな場面で現れているのですがお気付きになることは少ないと思います。
 例えば「まわしゆり」もこのリズムに乗っています。また「ヒーヒヒヒイーー」というような音の動きの時もそうです。多くの場合この加速の仕方がたりません。少しずつ早くなってはいますが、効果的で無いのです。

 このリズムを効果的にするためには間を「1/2、1/2、1/2、、、、」と変えて行くのです。あるいは「弾んだボールのとまっていく様子」といったら理解していだだきやすいかもしれません。このためには始めの「とーーーーん」がある程度長くないとうまくいきません。皆さんの感覚より、始めはより長く、お終いはより短くだと思います。

 この間を会得していただくと本曲が、よりいきいきしてきます。聴いている人に「本曲は眠くなる」なんていわせないでください。  

目次に戻る

2002年 9月 「ウォームアップは必要?」

 尺八に限らず、楽器の演奏に際してウォームアップは必要です。
 しかし、時として本番の前に音を出せない時間が長くなってしまうこともあります。舞台そでで待機しなくてはならないとか、舞台上で偉い人の挨拶を聞かなくてはならないとか。。。
 そうするとせっかくウォームアップしたのにほとんどウォームアップ前の状態で吹かなければならないということになってしまいます。
 尺八自体が冷えてしまうと、吹く事による温度上昇でピッチが上がってしまうことがあるので、それを防ぐためには手で冷えないようにする、ぐらいのことは舞台上でもできます。
でも、「吹く感じ」は実際に吹かないとすぐにはもどってきません。

 ところが、やわらかい音を出す人ほど、いきなり吹いた時にウォームアップができたときと遜色ない音を出すものです。

 スポーツの世界で、たとえば100m競争などは直前まで選手は体を動かしています。筋肉を極限の使い方をするので、そうでもしないと壊れてしまいます。

 尺八の吹き方でも「筋肉を極限の使い方」をする人は「ウォームアップ」がとても大切になってしまうのです。
 それに対して、口の周囲の筋肉がリラックスした状態で音を出せる人はウォームアップの必要性が少ないのです。

 練習の開始の時、いきなり曲を吹いてみると言う練習も良いかもしれません。リラックスした状態で音を出せない限りうまくいかないので、自然とリラックスした吹き方が身に付くでしょう。    

目次に戻る

2002年10月 「打ちのこつ」

 短かく同じ音が続く時、伝統的な尺八の手法は、特定の孔を打って(「押す」という場合もあるようです。)一つの長い音と区別をします。この時、きれ良く打てる場合とそうでない場合があります。

 きれがいい打ちと、そうでない打の大きな違いは「正確さ」の一言につきます。
 「打つ」時の正確さとは何かと言うと、「正確に閉じる」ことと「素早く開ける」です。
 「素早く開ける」ことは、どなたもそう苦労する事ではありません。しかし「正確に閉じる」ことは実はとても大変なことなのです。

 「正確に閉じる」とは孔の周囲に渡って指が触れるのが同時ということです。片側から閉じていって最後に、残った隙間が閉じる。というような閉じ方は正確とは言えません。
 「正確に閉じる」にはやはり力を抜く事です。尺八を吹かないで、指の力を抜いてゆったりと閉じても「ポン」という音が大きく鳴れば「正確に閉じる」ことができています。

 「コロコロ」「五孔の連続打ち」などもこの「正確さ」を無しでは、出来ない技法です。  

目次に戻る

2002年11月 「究極の暗譜法!」

 本曲は暗譜して自分の中から湧き出て来てこそ本物です。
暗譜せずに舞台で本曲を演奏される方も居られますが、暗譜している方に比べてやはりどこか緊張感が欠ける様です。

 以前にも暗譜の仕方の例を書きました。(99年5月「暗譜」得意ですか
実は私(柿堺)も暗譜がすらすらできるというわけではありません。今までにも色々な方法を試みてきました。そしてついに!「究極の暗譜法」とい言える方法を考え出しましたので、惜し気も無くここに公開する次第です。

 譜面を見て問題なく吹ける状態になっている前提で話しをすすめます。
 まず、それまで使っていた譜面に白紙を乗せて、行の始めの部分(行の出だしの音)だけが見えるようにしてコピーします。
この譜面を使って吹いてみて下さい。「譜面を見て問題なく吹ける状態」になっていれば、曲の始めの部分は当然憶えていると思います。また、出だしさえ分かれば、最後まで吹ける行も多いと思います。
 出だしを見る必要も無い行に関しては、行の番号を残して消してしまいます。
 その譜面を使って吹いている内に、次のフレーズが浮かんでこない部分が出て来ます。その時には頭に浮かんでこなかったフレーズの始めの部分を元の譜面を見て書き加えます。
 浮かんでくる部分は消す、浮かんでこない部分は書き加える、という作業をしていくと、白紙の中に引っ掛かる部分のみが残された(浮び上がった)譜面が出来上がります。
 実はこの状態の譜面は、頭の中に映像として非常に強く残ります。
 そしてこの譜面を使って何度か吹いてみて下さい。あら不思議。もう暗譜が出来ちゃった。

 元の状態の譜面をいつまでも使っていると、暗譜している部分の映像が邪魔をして、暗譜していない部分を際立たせてくれないのです。ですから、身に付いた部分は譜面上から消してしまうのです。

 実践して感想をお聞かせ下さい。    

目次に戻る

2002年12月 「割り増しのメリ、割り引きのメリ」

 またまたメリに関してです。
 メリは多くの方は高めになる傾向にあります。その「高め」にも実は色々あって、一人の人でも一曲の中でかなり高めなメリや、ちょっとだけ高めなメリなど様々です。メリの技術が出来上がってくると「低め」なメリも存在します。
 なぜ「かなり高め」なメリや「少し高め」または「低め」なメリが出来てしまうのかというと、それは、そこでのメリ難易度に原因があります。
 十分な間があって息をする時間もあり、メリを出す準備ができる時のメリの難易度は高くありません。
 しかし、フレーズの中にメリが出てくる場合、十分に準備する時間がないまま出さなくてはなりません。 こういった時には高めになります。例えば、レの後のツのメリなどがそうです。
 ロの後のツのメリの難易度はレの後のツのメリより低いと思われます。なので正しく出しやすいメリです。
 このようにメリを出す状況によってメリの程度を変えなければなりません。(本当はいつも同じようにめっていれば同じ音程が出るはずです。ところが前に何の音があるかによってめる感覚が狂ってしまうのです。)
 ですから、状況に応じてメリに割り増しをするのです。レの後のツのメリは3割り増しぐらい、といったようにすることで、より正しいメリが出せるようになります。
 また、割り引きのメリが必要なこともあります。ウをめってレと同律を出した次にツのメリが来る場合、直前には深くめっているのでいつもの一孔の開け加減では低くなり過ぎてしまいます。顎の角度をその瞬間になおすのはとても大変なので、一孔の開け加減を変える方がいいと思います。これが、「割り引きのメリ」です。
 常に状況に応じて正しい音程が出せるようにメリの認識の程度を微調整してみて下さい。

目次に戻る
TOPに戻る

無断転載禁止2000 国際尺八研修館, All Rights Reserved.